10月21日開催の第20回労働政策審議会雇用環境・均等分科会において、
「職場におけるパワーハラスメントに関して
雇用管理上講ずべき措置等に関する指針の素案」が示されました。

今回は、先日メルマガでお届けした内容を
こちらのブログでも紹介したいと思います。

● 指針素案の内容をまとめてわかりやすくお伝えします!
● 法律に準拠しながらやるべき組織の対策とは?
● 法律を守るだけでハラスメントは防げるのか?

上記のような観点でお伝えしたいと思います。

<ハラスメント指針素案を読み解こう>

すでに、パワハラの定義やパワハラに該当するとされる6つの類型は
公表されておりますが、そこから大きくずれるものではなく、より具体的に
その例示がなされている、というのが今回の素案の特徴になっています。

では、パワハラの定義を見てみましょう。

★パワハラの定義

職場において行われる

  1. 優越的な関係を背景とした言動であって、
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
  3. 労働者の就業環境が害されるものであり、
  4. ①から③までの要素を全て満たすもの。

なお、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当しない。

パワハラは上記の①から③までの要素を全て満たす必要があります。
そして、個別の事案の判断については、
その言動が「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」内容であるかどうか、
その言動により労働者が受ける身体的又精神的な苦痛の程度等を総合的に
考慮して判断することが必要とされています。

③を考えると、「労働者が苦痛に感じているかどうか」が大切なポイント
になってきます。もちろん個人差があるのは承知の上で、素案では、

「平均的な労働者の感じ方」、同様の状況で当該言動を受けた場合に、
社会一般の労働者の多くが、就業する上で看過できない程度の支障が
生じたと感じるような言動であるかどうかを基準とすることが適当。

と説明しています。
なかなかこのあたりも難しい判断ですが、
一般的な道徳的な考え方がベースになる、ということになります。

これらパワハラの代表的な例として、いわゆる6類型が該当する例、
該当しない例と共に示されています。

★パワハラの6類型

  1. 暴行・傷害(身体的な攻撃)
  2. 脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)
  3. 隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)
  4. 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)
  5. 業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)
  6. 私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)

事例としては、例えば以下のような内容になっています。

【脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)の例】
◆該当すると考えられる例◆
・人格を否定するような発言をすること。
例えば、相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な発言をすることを含む。

◆該当しないと考えられる例
・ 遅刻や服装の乱れなど社会的ルールやマナーを欠いた言動・行動が見られ、
再三注意してもそれが改善されない労働者に対して強く注意をすること。

各6類型でそれぞれ、例示があります。

では、会社としてどのような措置をしていけばいいのでしょうか。
それらの内容についても素案で方向性が示されています。
また、取り組みとして望ましい事例を挙げています。

会社として必要な取り組み

  1. 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
  2. 相談(苦情を含む。以下同じ。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
  3. 職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
  4. (1)から(3)までの措置と併せて講ずべき措置

具体的な取り組み内容とその例としては以下のようになります。

(1)事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発の例
・就業規則やその他社内文書において、パワハラを行っては
いけないことを規定し、方針を示すこと。
・同時にパワハラを行った場合の懲戒処分なども規定して、
パワハラに対して厳正に対処することを明示すること。
・社内報やHP、パンフレットなどにパワハラ防止を記載し啓発すること
・パワハラ防止のための研修等を行うこと

(2)相談体制の整備の例
・相談窓口をあらかじめ定め、労働者にその担当者や利用方法を
周知すること
・外部機関に相談窓口を委託すること
・相談窓口の担当者が、適切に相談に対応するためのマニュアル等
を整備すること
・相談窓口の担当者が、人事部門と連携をはかる仕組みを整備すること

(3)事後の迅速かつ適切な対応の例
・事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認するために、
相談窓口担当者等が相談者、行為者双方から事実関係を確認すること。
・確認が困難な場合は、中立な第三者機関に紛争処理を委ねること。
・パワハラ行為が認めれた場合は、行為者に対して懲戒等で定めた
措置を講ずること。
・あわせて、被害者と行為者の関係改善、配置転換、行為者の謝罪等
の措置を講ずること。
・再発防止のための啓発、研修等を行うこと。

(4) (1)から(3)までの措置と併せて講ずべき措置の例
・相談者・行為者等のプライバシーを保護するためにプライバシー
保護について事前にマニュアル等に定めた上で対応すること。
・相談者・行為者等のプライバシーの保護のために、相談窓口の担当者に
必要な研修を行うこと。
・パワハラの相談やその対応に協力したことを理由として不利益な
取り扱いを受けないことを就業規則等に記載し、周知すること。

上記のような取り組みをあげて、
パワハラ防止に努めることを謳っています。

問題は、上記の取り組みを行うだけで、
本当にパワハラがなくなるのか?
ということです。

<法律を守ることでパワハラは防げるのか?>

パワハラの類型やその具体例をみていただくとわかりますが、
どの内容も、小学生でもわかるような「あたりまえ」の内容です。

・人を叩いてはいけません
・人の悪口を言ってはいけません
・仲間はずれにせず、みんな仲良くしましょう

このようなことが丁寧に書いてあるわけです。

そして、基本的な考え方は、

「人の嫌がることはやめましょう」

ということ。
誰でもわかることです。
それらを法律として明記した、というのがいわゆるパワハラ法です。

国として、会社として「パワハラは許さない」という
決意を表明することはとても大切なことです。

ただ、その取り組み内容には、もっともっと深いレベルで
人と関わる覚悟が必要になってくるように思います。

ルールで人は動きません。
正論で人は動きません。

もしルールで動くなら、
もし正論で動くなら、

この世に戦争も争いもいじめも起きません。

なぜ起きるのか。

人は感で動くからです。

感情は人が生まれ、生きていく中で、それぞれが
様々な経験を通じて、十人十色の感情の方程式を持ちます。

ひとりひとりのこの方程式を理解して対処しない限り、
パワハラの問題は解決されないように思います。

そのためには、

「心」の教育が非常に大切になります。

企業を動かすのは「人」です。

その「人」を動かすのはその人の「心」に他なりません。
それを無視しては何も変わらないのです。

私自身もパワハラの相談に応じることがあります。
パワハラの管理職を面談することもあります。

パワハラの背景は、行為者自身の心の問題が
とても大きいのです。
理解されない苦しみを本人が背負っていることも
非常に大きいのが事実です。
そこを誰かと共有でき、自分を受け入れられたとき、
パワハラなどする必要がなくなってきます。
そうやって変わっていく方を見てきました。

このパワハラ法案の施行をきっかけに、
「人への関わり方」を見直す機会になればと思っています。

国も、会社の風土そのものを改善するための取り組みとして

・風通しの良い職場風土をつくるためのコミュニケーションの活性化
・感情コントロールやコミュニケーションスキルアップのための研修

などの取り組みを推奨しています。
本質的な改善はルールでは縛れないことを
どこかでわかっているのだと思います。

さらに一歩踏み込んで、

コントロールやスキルアップの前に

「人の感情理解」

をすべての人たちが身につけていくことが
ハラスメント対処の第一歩になるのではないでしょうか。

「利他の心を軸に持っているのか」
そんなことがとても大切になるように思います。

社内のハラスメント対策でお悩みの方は

社内のハラスメント対策でお悩みの場合は、
弊社までご相談ください。まずは、課題を整理し、対策の道筋つくりのお手伝いをいたします。